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腎臓診療

血液透析中の猫

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腎臓内科では急性腎障害慢性腎臓病という2つの病気を専門に治療します。

獣医師の先生の中には今でも急性腎不全とか慢性腎不全という病名を用いて腎臓病を説明あるいは治療しておられる先生がおられます。しかし、ヒトの医学や獣医の専門医の間ではこの2つの用語は既に使われなくなっています。

その大きな理由はこうした病名を使っていると、動物を救える可能性のある適切な時期に必要な治療を行えないことが多いからです。

急性腎不全と慢性腎不全は今まで全く異なる病気として診断・治療されてきましたが、急性腎障害と慢性腎臓病という考え方ではこの2つの病気に共通した部分が存在することを理解し、それぞれの特徴を把握したうえで生命の維持に努めます。

急性腎障害

急性腎障害という病気は火山の爆発に例えると理解しやすいと思います。火山には富士山のような休火山と桜島のような活火山の2種類があります。

休火山も活火山も大きな噴火を起こせば甚大な被害をもたらしますが、休火山の場合は噴火が収まれば元の静かな山へ戻る可能性やおとなしい活火山に移行する可能性合があります。

火山

しかし、活火山の場合は噴火が収まっても、良くて元の状態に戻るだけ、下手すると前より規模の大きな活火山になる可能性があります。

急性腎障害も火山の爆発の場合と同じです。すなわち、この病気にはその障害が起こる前は正常な機能を営んでいた腎臓に新しい傷害が加わったタイプ(急性腎臓病)と腎臓の機能が長い間低下していたタイプ(慢性腎臓病)の2つがあるのです。

どちらのタイプの急性腎障害でも点滴などの簡単な治療で元の状態に戻れるものと、簡単な治療では状態が改善せず、透析などの治療が必要な深刻な状態があります。

急性腎障害で重要なことは、この病気の姿が刻々と変化することです。したがって、この病気は腎機能を表す指標(クレアチニン濃度や尿量)が時間と共にどのように変化するかをモニターし、その程度に応じて病期を分類することです(表1)。

病期を分類できれば、今までの医学的証拠と経験から第Ⅱ期(傷害期)や第Ⅲ期(不全期)の患者は透析治療の必要性が高いですから、その準備をしなければなりません。

表1. 急性腎障害の診断基準と病気の段階
要素 内容
腎機能の低下が起きた時間 48時間以内
血清クレアチニン濃度 0.3mg/dl以上の増加、あるいは正常時の1.5倍以上の増加
尿量 1時間当たり0.5ml/kgを下回る尿の生産が6時間以上続く
病期 血清クレアチニン濃度 尿量
Ⅰ期(危険期) 基準値の1.5倍以上の増加 0.5ml/kg/時間が6時間以上持続
Ⅱ期(傷害期) 基準値の2倍以上の増加 0.5ml/kg/時間が12時間以上持続
Ⅲ期(不全期) 基準値3倍以上の増加 0.3ml/kg/時間が24時間以上
あるいは無尿が6時間以上持続

急性腎臓病、急性腎障害、および慢性腎臓病の関係を分かりやすく説明したのが図1です。

この図は円が重複している部分に注目すると、急性腎障害は急性腎臓病と慢性腎臓病の2つの病気から生じ、急性腎臓病の中には回復後に慢性腎臓病に移行する場合があること、また慢性腎臓病は急性腎臓病を起こし、急性腎障害に移行する場合があることを示しています。

図1. 慢性腎臓病、急性腎障害、および慢性腎臓病の関係

図1

さらに、急性腎障害は刻一刻と変化し、適切な治療により速やかに元の状態に回復する場合と通常に治療に反応せず死に向けて一直線に進行する特徴を備えた病気であることを示したのが図2です。

刻一刻と変化する原因は腎機能の障害とそれから生じた併発症(浮腫、アシドーシス、貧血、多臓器障害など)によるもので、この図は時に患者が単に腎機能障害ではなく、それから生じた併発症から死亡する場合があることを教えています。

図2. 腎機能低下と病期の進行の関係

図2

【 急性腎障害の治療 】

急性腎障害を治療する場合はこの病気が刻一刻と変化し、腎障害だけでなくそれから生じた併発症からも患者が死亡する可能性を知ったうえで行わなければなりません。

難しいのは腎臓の障害により生じた血液の中のクレアチニン濃度の上昇が実際の腎臓の機能を正確に表していないこと、さらに治療により尿量が大きく増えても、それが必ずしも腎機能が良くなったことを表していないことです。
例えば、体重2.3kgのチワワの腎機能を別な方法で正確に測定したところ、腎機能は正常の35%しかありませんでした。

しかし、その時の血液中のクレアチニン濃度は1.0mg/dlで、一般には正常範囲という値でした。また、尿量は血液の濾過から作られる量とその後腎臓内で吸収される水の量により変化します。

もし、治療しても腎臓内で作られる量は正常の50%しか増加しなかった場合でも、その後の水の吸収が正常より50%低下していると、全体的な尿量は正常と同じになり、尿量が正常に回復し、治療が成功したと勘違いされる場合があるのです。

したがって、急性腎障害の治療では刻一刻と変化する尿量および体重と血中のクレアチニン濃度を綿密に評価し、それらを総合的に評価して、治療の成功や不成功をきめなければなりません。

尿量が増え、クレアチニン濃度が低下しても、患者の状態が改善されない場合は、点滴などによる内科療法の限度を超えた状態と判断し、速やかに血液透析を行い、患者の命を守りながら、腎臓に回復する時間を与えなければなりません。

慢性腎臓病

慢性腎臓病の定義は腎臓の機能や傷害を示す証拠(血液検査、尿検査、あるいはレントゲンや超音波検査などの異常)が少なくとも3ヶ月以上存在していることです。

したがって、診断には3ヶ月以上かかるのが普通です。中年から老齢の犬猫は食欲不振や嘔吐あるいは体重減少などの理由で診察を受けると、血液検査や尿検査で直ちに慢性腎不全や慢性腎臓病と診断されるケースが多いのですが、ほとんどの場合、それは誤診です。

正しくは、安定した慢性腎臓病に他から何らかの傷害(脱水や薬あるいは治療)が加わり、急性腎障害が起こったものです。即ち、急激な嘔吐、下痢、食欲不振などの症状を表している動物に慢性腎臓病の診断を下してはいけないのです。

慢性腎臓病の動物は末期の患者を除けば腎機能が低下していても、少なくとも3ヶ月は安定した状態で生活していなければなりません。

【 慢性腎臓病の診断と病期の分類 】

ヒトでは年齢と性別およびクレアチニン濃度から腎臓が血液からどの程度のスピードで尿を作っているか(、即ち糸球体濾過量)を計算で求め、正確に腎機能を評価することができます。

しかし、犬猫にはそうした方法がありませんので、Brown先生(犬)と私(猫)が簡単に腎機能を評価できる方法を確立しました。それがイオヘキソールという造影剤を用いた血漿クリアランスという方法で、今や日本を除く欧米先進国では広く行われています。

この検査はイオヘキソールを含むオムニパークという薬を少量(90mg/kg体重)静脈内に注射し、その後2時間、3時間、および4時間で採血し、その濃度の減り具合から腎機能を推定できる、素晴らしい方法です。

中にはヒトの論文を聞きかじり造影剤が腎機能に悪影響を及ぼすと非難する先生もおられますが、日常的に行われているCT造影検査ではこの薬が600mg/kgの用量で投与されていることを知っている先生は非常に少ないのです。

ヒトでは15年間で8000人にこの検査を行い副作用は全くないと報告されていますし、私個人も犬猫で2000回以上実施しましたが、副作用は経験したことはありません。

慢性腎臓病の病気の段階は血清クレアチニン濃度により4つにわけられていますが(表2)、重要なことはこの表で示したクレアチニン濃度はあくまで欧米の中型犬に適用できるものです。したがって、小型の犬ではこの数値を適用できない場合もあります。

例えば、慢性腎臓病と診断された12歳のヨークシャテリアをイオヘキソール血漿クリアランスにより腎機能を調べたところ、結果は正常の35%でした。しかし、時のクレアチニン濃度は1.0mg/dlで、その事実を知らない担当の先生は正常と判断してしましました。このようなことは日常茶飯事で起こります。

表2. 犬猫の慢性腎不全の病気
病期 病状
SCr(mg/dl)
Ⅰ期 危険期 <1.4 <1.6
Ⅱ期 軽度腎性窒素血症 1.4-2.0 1.6-2.8
Ⅲ期 中程度腎性窒素血症 2.0-5.0 2.9-5.0
Ⅳ期 重度腎性窒素血症 >5.0 >5.0

さらに慢性腎臓病の病期は蛋白尿と高血圧の存在でレベルが増加します。蛋白尿や高血圧により腎臓病の危険度は大きく上昇します。

【 慢性腎臓病の治療 】

犬猫の慢性腎臓病は血液透析を行えるヒトと異なり「不治の病」です。ちまたでは、酸素水や酵素で腎不全が治ったと宣伝している会社や獣医師がおりますが、全てペテンと考えて構いません。また、人工活性炭を処方する先生もおられますが、慢性腎臓病の特徴である腎機能の進行性低下をこの薬で防ぐことはできません。

それでは慢性腎臓病はどのように治療するのでしょうか?
それには慢性腎臓病を進行させる危険因子をできるだけ排除することです。

(1)ビタミンD3療法

犬猫の慢性腎臓病では早い段階からビタミンDが欠乏することが分かっています。ビタミンDは骨を強くする薬として有名でしたが、このビタミンは全身の細胞の正常な機能に必要なことが分かってきました。

慢性腎臓病と診断された犬猫では必ず血中のイオン化カルシウムと上皮小体ホルモン(PTH)を測定し、イオン化カルシウムが低下したり、PTHが上昇している場合は活性型ビタミンD3をそうした値が正常化するまで投与します。

残念ながらこの大事な薬を調剤できる病院が日本ではありませんので、希望される飼主は当病院にお問い合わせ下さい。

(2)蛋白制限食

蛋白制限食は2つの目的で投与します。1つは腎臓の仕事量を減らし、体の中で蛋白質から作られる毒素の量を減らすことで、もう一つは尿中に漏れ出る蛋白質の量を減らすことです。

市販されている腎臓病食や病院で処方される腎臓病食を盲信して投与することはやめるべきです。蛋白の制限程度は腎機能の程度に応じて決めなければなりません。

それが可能な食事を提供できるのは今のところ(株)ヒルズコルゲートの療法食だけです。尿中に漏れる蛋白を減らすために薬を処方される場合もありますが、その時こそ蛋白の厳密な制限が必要です。

(3)水分療法

慢性腎臓病のⅢ期やⅣ期に進行した動物の多くは自分の腎臓で尿を適切に濃縮することができず、食べた蛋白質のカスを体から排泄するために多くの尿を作ります(多尿)。

次に、多尿により水分が失われて喉が渇き(多渇)、それを補うために多くの水を飲みます(多飲)。したがって、一般の病院では輸液をある間隔や毎日投与してその水分を補いますが、慢性腎臓病のⅢ期やⅣ期の動物でも消化器は正常に機能していますから、この臓器を利用した水分療法を行うことをお勧めします。

即ち、食道に治療用のチューブを取り付け、そこから必要な栄養、水分、薬などを家庭で行えるようにします。

(4)血液透析

現在、犬猫の末期慢性腎臓病患者に対する血液透析は普及していませんが、当病院では食道に留置したカテーテルを利用して水分療法と利尿療法を行い、血中尿素窒素の濃度が犬で80mg/dl、猫で100mg/dlを超えた段階で血液透析を行う方法を確立しています。

腎機能が少し残っている患者であれば、10日に1回程度の透析で生命を維持することが可能です。

【 血液透析 】

腎臓

腎臓と肝臓は体にとってとても重要な臓器で、食事と共に体に吸収された毒素や体内で作られた毒素を排泄する重要な役割を果たしています。すなわち、肝臓は胆汁として毒素を十二指腸に排泄し、腎臓は尿として毒素を対外に排泄しています。

黄疸

そのため、肝臓の機能が急激に低下した場合は胆汁が正しく排泄されませんので、その黄色い色素が体内にたまり、黄疸が起こります。同様に、腎臓の機能が急激に低下すると、腎臓が適切に尿を濃縮できない場合は多尿が、腎臓が適切に尿を作れない場合はその反対に乏尿や無尿が起こります。

また、肝臓が悪くなった場合の黄疸と同じで、腎機能が急激に低下すると血中の尿素(BUN)やクレアチニンの濃度が異常に上昇し、尿が作られないために体全体に浮腫(むくみ)が起こります。

体全体に浮腫みが起こると、それぞれの組織や臓器の血流が悪くなり、脳や神経、心臓と血管、肺、肝臓、胃や腸、腎臓などの機能がさらに悪くなり、最後はそうした臓器が同時に機能不全に陥る多臓器不全で死亡します。その状態を改善できる唯一の方法が血液透析です。

血液透析を行っても腎臓を直接治療することはできませんが、腎臓の代りに体内に貯まった水や毒素を除去できますので、その間に腎臓の仕事を休ませ、生命を維持しながら腎臓の機能の回復を待つことができます。

血液透析の原理は非常に簡単で、犬や猫の頸静脈からカテーテルを用いて血液を体外に取り出し、それを人工腎臓(ダイアラザー)に送り、そこで毒素と水を除去し、きれいになった血液を再び犬猫の体に戻します。

人工腎臓

体に貯まった毒素は一度に全て除去してしまうと、体の中でバランスが崩れ、動物が死んでしまいますので、最初の3日間は徐々に除去し、その後はできるだけ多く除去します。

折れ線グラフ

上のグラフは、透析が成功した症例の血中尿素窒素(BUN:毒素の代表)の変化を示したものです。透析中は機械的にBUNを下げますが、翌日には再びBUNの濃度が上昇します。

この例のように4日目から7日目にかけてリバウンドの大きさが小さくなれば、動物の腎臓が再び働き出したことを示しており、透析を中止することができます。

しかし、次のグラフのように4日から7日の透析で、透析中はBUNを正常範囲に落とすことができても、BUNがもとの状態に戻るような症例は現時点で全く腎臓が機能していないことを示していますので、飼主と相談して透析を続けるかどうかを相談しなければなりません。

折れ線グラフ

血液透析が成功するかどうかは、透析の上手下手もありますが、それ以上に患者の腎臓にどの程度回復する力が残っているかに係っています。

したがって、効果のない治療(特に輸液療法)や薬(ドーパミンやフロセミドなど)を長々と続けていると腎機能が完全に失われてしまいますので、担当医の先生が治療効果に頭を傾げたり、飼主がこの先生では救命できないと判断した場合は、素早い転医が必要です。

人工腎臓

血液透析

血液透析

腎臓内科診療は完全予約制です。

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