腎臓は賢い臓器

「病気に陥った腎臓でも世界的に有名な腎臓病学者よりは賢い」という言葉があるように、正常や病気の状態における腎臓の構造や働きは実に複雑です。そのため、腎臓は一般の飼主の皆様だけでなく、獣医師の先生方にとっても理解するのが難しい臓器です。
しかし、腎臓病に陥った愛犬や愛猫の運命は自宅で毎日世話をする飼主の手にゆだねられていますから、診断と治療を目的に腎臓病を勉強しなければならない獣医師の先生方とは異なった視点から腎臓の構造や働きを学んでおく必要があります。

腎臓病の種類

飼主様にとって重要な腎臓病は、大きく急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)の2つに分けることができます。
この2つの病気の区別は獣医師でも難しい場合があり、特に高齢な動物では急性腎障害と慢性腎臓病が重複していることが多く、急性腎障害を適切に治療されず亡くなってしまう犬猫が後を絶ちません。
獣医師でも区別がつかない病気を飼主の皆様に医学的に説明するのは難しいので、この病気を火山とその爆発に例えてお話しします。

腎臓病に例える火山は、大きく分けて次の3つの種類に分類されると思います。

  1. 西ノ島(小笠原)のように今まで地図にさえなかった所から突然現れる活火山。
  2. 富士山(静岡)のように外見は静かに見える活火山。
  3. 桜島(鹿児島)のように毎日噴煙をあげている活火山
西ノ島
富士山
桜島

海底火山の突然の爆発で出来た西ノ島のような活火山には専門家以外は近づくことができませんから、今まで正常だった腎機能が何らかの原因で命を脅かす程度に低下した急性腎障害とよく似ています。
即ち、飼主は動物の救命に携わることはできず、動物が助かるか否かは依頼した専門家(獣医師)の能力にかかっています。

一方、富士山は過去に数回の大噴火を起こしたと歴史書には書かれていますが、現在はそのすそ野に多くの人々が住み、年間では20万人以上が登山を楽しむ山で、腎臓の障害を抱えながら飼い主と恙ない生活を送っている慢性腎臓病の患者とよく似ています。
飼い主が愛犬や愛猫に多くの事をしてあげられるのはこの状態の患者さんです。

また、富士山ほど安定していませんが、毎日少量の噴煙を上げている桜島もその麓や直面する市内には多くの人々が生活を営んでいます。したがって、不安定ながら飼い主の治療努力で日々の生活を送れる慢性腎臓病の患者に似ています。
この状態の桜島は富士山と異なり度々爆発を起こします。こうした爆発は以前の爆発の継続ではなく、新しいマグマの活動による爆発なのです。

不安定な慢性腎臓病患者にもこ様な症状の悪化が起こり、その原因は慢性腎臓病の連続した悪化ではなく、新しい障害(急性腎障害)が慢性腎臓病に重複したものです。
こうした患者は医学的に慢性腎臓病の急性増悪と呼ばれており、急性腎障害として治療しなければなりません。
多くの獣医師はこの慢性腎臓病の急性増悪を単純な悪化と勘違いし、輸液療法程度で元の状態に戻ると楽観して治療しますが、傷害の程度(脱水や薬の副作用など)が強いと乏尿や無尿に陥り、血液透析などが必要な重症患者となります。

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病の定義

  1. 腎臓の障害を示す指標(蛋白尿、血中のBUNやクレアチニンの増加、尿濃縮能の低下、腎臓の縮小や表面の不正など)。
  2. 正常の50%を下回る糸球体濾過量(GFR)が少なくとも3ヶ月以上持続している状態。

犬猫における発生率

下のグラフは中期および後期の慢性腎臓病と診断された10万7千頭と初期から後期のCKDと診断された228頭の猫の年齢別発生率を示したものです。
犬猫でもヒトと同様に年齢に伴い慢性腎臓病の発生が増加するのが分かって頂けると思います。
したがって、犬では7歳を超えたら、猫では5歳を超えたら、年に1回は慢性腎臓病の証拠の有無を動物病院で調べてもらいましょう。
その際、少しでも慢性腎臓病の疑いがある場合は先生にお願いしてGFRを測定することをお勧めします。

早期発見法

ヒトでも犬猫でも腎臓が血液を濾過して尿を作る速度を測定した糸球体濾過量(GFR)という値が最も正確に腎臓の機能を評価できることが分かっています。
ヒトではどの病院の検診でも簡単に慢性腎臓病を発見できるように血清クレアチニン濃度からGFRを推定できる式が確立されています。
犬と猫でも血液検査だけで簡単にGFRが測定できる方法を開発しましたが、その方法を利用している先生方はほとんどおられません。
その理由は単純にクレアチニンの測定より「面倒くさい」からです。
数年前から血中のSDMAが慢性腎臓病の早期発見に役立つと騒がれましたが、血漿クレアチニン濃度より感度が高いというだけで、それ以上のメリットはありません。
GFRの測定は慢性腎臓病の患者を正しく治療するには絶対に必要な検査です。
この検査法を知らない先生は問題外として、知っていても実施したことのない先生には当病院からの指示で簡単にGFRが測定できますから、一度掛かり付けの先生に相談してみてください。
それが愛犬や愛猫の命を守る唯一の方法です。

慢性腎臓病の犬猫の寿命

短命の噂とその真相

約11万頭の犬で慢性腎臓病の発生を調べたイギリスの研究では、慢性腎臓病と診断された犬の平均寿命は226日でした。
一方、211頭の慢性腎臓病の猫で、診断時点からの寿命を病期に応じて調べたアメリカの研究では、初期で1151日、中期で778日、後期で103日でした。
この傾向はヒトの慢性腎臓病で腎機能に応じた各年代の予測寿命を調べた研究でも認められました。

ヒトでもイヌやネコでも、慢性腎臓病を発症すると寿命が短くなるのは本当でした。
しかし、このグラフは慢性腎臓病の犬猫を長生きさせる重要なコツを教えています。
即ち、どの年代で慢性腎臓病が発生しても、病期(腎機能低下の程度)の軽い段階で発見すれば、それだけ残された寿命は長いという事です。
したがって、「慢性腎臓病の早期発見」と「腎機能の正確な評価」が最も重要だという事が分かります。

短命な原因

慢性腎臓病の患者が短命なのは腎臓の機能が時間に伴い徐々に低下するからです。
その原因として今までは「残された正常な腎臓の仕事量が増え、最終的には疲れ果てて正常な組織が壊れるという説。」と「腎臓から排泄されるはずの毒素が体内にたまりのこされた正常な腎臓の組織が壊れるという説。」が主流でした。
しかし、食事の蛋白質を減らして腎臓の仕事量を減らしても、人工活性炭などで毒素を吸着しても腎機能の進行を完全には食い止めることはできませんでした。
そこに過去20年の研究を基に新しい原因として「リン中毒説」が登場しました。

リン中毒説は簡単に述べると次の様になります。
蛋白質の中には多くのリンが含まれていますので、蛋白質に富んだ食事を摂取するとリンの摂取量も増えます。
摂取したリンが腸管から吸収されると血中のリンの濃度が上昇します。
すると、骨の細胞からFGF-23というリン排泄ホルモンが分泌され、腎臓内で合成されたKlothoという蛋白質と共同して腎臓からリンの排泄を促し、リンの血中濃度は正常値に戻ります。
しかし、慢性腎臓病ではKlotho蛋白の合成が早い段階から減少することが分かり、このKlothoは今や抗老化遺伝子であることが判明しました。
即ち、Klothoの合成が低下すると老化が促進され、これが早死につながるというのです。

原因因子の推移

原因因子であるFGF-23とKlotho遺伝子の慢性腎臓病における血中濃度の推移を示したのが上図です。
この図は慢性腎臓病の早い段階からKlotho遺伝子が減少しはじめ、Clotho遺伝子の協力を得られないためFGF-23(リン排泄ホルモン)の放出が増加し、増加してもリンを十分に排泄できない状態(末期)になってはじめて血中のリン濃度が上昇することを示しています。
したがって、慢性腎臓病の治療では血中リン濃度が上昇する前から食事中のリンを吸着してリンの吸収を抑え、FGF-23が過剰に分泌されないようにすることが重要です。

飼い主様によるリノパワーでの慢性腎臓病治療法

リノパワーは以下の成分で作られています。

  1. クエン酸第二鉄
  2. キト酸
  3. 還元型コエンザイムQ10(Pのみ)

クエン酸第二鉄はヒト用のリン結合剤「リオナ」に含まれている成分で、食事と共にあるいは食後に服用すると、食事中のリンを効率良く吸着してくれます。

キト酸はカニ類の甲羅に含まれる成分で、リンだけでなく様々な尿毒素を吸着することができます。

還元型コエンザイムQ10(カネカ食品)は生体に速やかに吸収されて抗酸化作用や抗炎症作用を発揮し、腎臓を様々な傷害から守ってくれます。

各成分は乳児の食品添加物にも使用できるグレードの物を使っていますので、基本的に副作用はありません。

リノパワーの投与方法

リノパワーは血中リン濃度の正常な犬猫の体重当たりで投与量を決めてあります。
基準となる投与量は、犬の場合体重5kg当たり1日1g、猫では1頭当たり1日1gです。
この量は血中リン濃度により4倍量まで増やすことができます。
投与方法は、完食できる食事量に混ぜて与えるか、あるいは食事後に水で溶かして与えます(簡単に水に溶けます)。
重要なのは食事を食べるごとに必ずリノパワーを混ぜてあげることです。
失敗例の多くは、動物が1日に少量の食事を5回食べているのに、リノパワーは朝と夕方の2回しか与えず、食事回数と投与回数が同じになっていないことにあります。

リノパワーの効果

【 症例1 】
日本猫、9歳、去勢オス、体重4.5kg。
病歴 2015年 尿管結石。
現病歴 2016年10月27 食欲不振、BUN=116mg/dl、両側腎結石/水腎症。
治療 輸液療法、ACE阻害薬、ウロアクト。
転帰 全く改善なし。血液透析/安楽死の選択。
10月27日よりリノパワーPを治療に加える。
【 症例1 】のリノパワー添加結果
検査項目 10月24日 11月5日
BUN(mg/dl) 116 56
Crea(mg/dl) 10.8 2.5
Ca 11.3 13.7
Pi 9.8 4.2
【 症例2 】
犬、ポロニーズ、11歳7ヶ月、避妊メス、体重5.3kg。
病歴 慢性腎臓病。リノパワーPを2017年7月2日より投与開始。
【 症例2 】のリノパワー添加結果
検査項目 6月24日 7月8日 7月22日 8月5日 8月19日
TP(g/dl) 7.3 7.1 7.4 6.8 6.6
BUN(mg/dl) 90 66 102 61 35
Crea(mg/dl) 5.5 3.7 5.1 4.2 3.4
Pi 10.9 8.7 6.6 5.8 4.7

この様にリノパワーは、動物病院の先生も「なぜこうなるのか分からない」というぐらい劇的な効果を発揮する場合があります。
愛犬・愛猫の腎臓病でお悩みの飼主の皆様にはぜひリノパワーをお試しください。

リノパワーRとリノパワーPの違い

リノパワーR(レギュラー)には還元型コエンザイムQ10が配合されていません。
したがって、腎臓病以外の病気、特に犬では慢性僧房弁不全症などの心臓病、猫では甲状腺機能亢進症などの心臓肥大を起こしやすい疾患がない動物に与えるものです。
還元型コエンザイムQ10には腎保護作用と心臓保護作用がありますので、心臓病や心臓に影響を及ぼす疾患を併発している場合にはリノパワーP(プレミアム)をお使い下さい。

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